2010年5月26日水曜日

第6回・第7回研究会を開催しました

第6回社会運動ユニオニズム研究会
日 時:5月22日(土)
テーマ:ヨーロッパの社会経済改革に学ぶ~オランダの挑戦を中心に
報 告:久保隆光さん(明治大学商学部兼任講師)
共 催:明治大学労働教育メディア研究センター

当日の報告内容をもとにした論文を『労働法律旬報』に掲載しました。

オランダにおける社会政策の展開とワーク・ライフ・バランス政策への収斂(上)」〔『労働法律旬報』1730号(2010年10月25日発行)掲載〕
オランダにおける社会政策の展開とワーク・ライフ・バランス政策への収斂(下)」〔『労働法律旬報』1732号(2010年11月25日発行)掲載〕

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第7回社会運動ユニオニズム研究会
日 時:5月26日(水)
テーマ:国際運輸労連(ITF)の歴史と課題
報 告:浦田誠さん(国際運輸労連本部内陸運輸部会部長)

当日配布資料はここをクリックすればダウンロードできます。

当日の報告内容をもとにした論文を『労働法律旬報』に掲載しました。
浦田誠「ITFの歴史と題課」〔『労働法律旬報』1734号(2010年12月25日発行)掲載〕

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[以下は開催呼びかけの案内文です]
第6回社会運動ユニオニズム研究会
ヨーロッパの社会経済改革に学ぶ~オランダの挑戦を中心に

オランダはワークシェアリングを社会全体で敢行し、失業の改善に成功しています。また、非正規雇用労働者と正規雇用労働者の労働条件を均等化し、同一価値労働・同一賃金の確立、社会保険加入などが進み、社会格差が是正されています。

この社会経済改革(オランダ・モデル)によって、オランダでは夫婦やカップルがお互いにパートで働く、あるいはパートとフルタイムの組み合わせ働く「コンビネーションモデル(1.5稼ぎ)」という新しい労働のあり方が生まれ、ワークライフ・バランスが実現可能な社会になっているといわれています。また、オランダやデンマークでは、「労働時間の調整」「解雇の自由」という『フレキシビリティ(柔軟性)』と、『セキュリティ(社会保障)』とを抱き合わせた『フレキシキュリティー』という政策が導入されています。この政策も新しい労働社会のあり方のひとつとして注目されています。

そこで第6回となる本研究会では、久保隆光さんをお招きして、オランダ・モデルを中心にご報告いただき、日本の現状を改善する糸口を探してみたいと思います。久保さんは、オランダの労働市場改革などを中心に研究され、明治大学商学部の兼任講師を務められています。

日 時:5月22日(土)
テーマ:ヨーロッパの社会経済改革に学ぶ~オランダの挑戦を中心に
報 告:久保隆光さん(明治大学商学部兼任講師)
共 催:明治大学労働教育メディア研究センター
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第7回社会運動ユニオニズム研究会
国際運輸労連(ITF)の歴史と課題


今回はGUF(Global Union Federation、国際産業別労働組合組織)の一つである「国際運輸労連(ITF)」に焦点をあてて研究会を開催します。

ITFは、ロンドンに本部を置き、陸海空の労働組合が世界154ヶ国から加盟しています。ITFの結成は、ロッテルダムの港湾ストを英国船員が支援したことを直接的な経過とし、1896年7月に結成されました。以来100年余の道のりの中で、世界大戦や東西冷戦などの影響を受けながら、紆余曲折を経て今日まで活動を続けています。とりわけ、90年代以来のグローバリゼーションの大波を受けて、ITFの活動もかつてないほど重要性を増し、多様な取り組みが実践されてきました。

本研究会では、私鉄総連出身で、ロンドンのITF本部に勤務されている浦田誠さんに、ITFの100年余の歴史と現状、今後の課題について報告いただき、グローバル化の時代の国際労働運動のあり方について議論していきたいと思います。

第7回社会運動ユニオニズム研究会
日 時:2010年5月26日(水)
テー マ:国際運輸労連(ITF)の歴史と課題
報 告:浦田誠さん(国際運輸労連本部内陸運輸部会部長)      

[浦田誠さんから寄せられた報告主旨]
ITF(国際運輸労連)は、ロンドンに本部を置く国際労働団体で、陸海空の組合が世界154ヶ国から加盟しています。ITFの結成は、ロッテルダムの港湾ストを英国船員が支援したことを直接的な経過とし、1896年7月に結成されました。また、それ以前にも、産業革命による飛躍的な物流の発展により、モノを運ぶ交通運輸労働者の国際的な連携が歴史上初めて生まれ、ロンドンの港湾ストにブリズベーンの組合がカンパを送ったり、アイルランドの船員労組が海外に支部を結成した史実がITFの前史に記されています。

しかし、労働者の団結はいつの時代も、政府や使用者から疎んじられるもので、ITFの結成と同時に活動家たちがブラックリストに載せられ、直後のハンブルグ港争議で敗北するなど、1904年には早くも本部をドイツに移転し、鉄道労組の指導の下、労使協調路線を敷き、加盟人員の拡大に努力する時期に入ります。しかし、これも第一次世界大戦の勃発で、重大な危機に直面します。各国の組合がそれぞれの政府の戦争政策を支持したため、労働者の国際連帯は止まり、ITFも数年間機能停止に陥ったのです。ようやく1919年にアムステルダムで再建大会を勝ち取り、オランダ人指導者、エド・フィメンの下、ファシズムに反対する運動と欧州以外の組合を勧誘する活動を展開します。

このように、ITFの歴史は大きな紆余曲折をその後も数回重ね、今日に至っています。とりわけ、この10年はグローバリゼーションの大波の中、ITFの活動もかつてないほど重要性を増し、多様な取り組みが実践されてきました。この先10年あるいは20年を見据えるためには、過去を謙虚に学ぶことが必要です。「歴史は繰り返す」というなら、また停滞の時期を経験するのか。それともこれまで蓄えた力を残し、新たなる課題に立ち向かっていくのか。ITFは、大きな岐路に立たされているのです。

こうした113年の歴史を研究会では検証すると共に、参加者の皆さんの体験などに照らし合わせた上で、ITFに留まらず、広範な国際労働運動の将来について議論できれば幸いです。とりわけ、私が担当する部会では、ITFの活動をできるだけ職場に近いところで設定できるよう近年努力してきました。果たしてそのアプローチが日本の皆さんにも通用するのか、ご意見頂きたく思います。

どんな時代であれ、どんな課題を背負うにせよ、労働者の国際連帯を促進させることがITFの使命であります。そうした意味では、イランの労働運動を支援する闘いや、トルコの大量解雇者撤回闘争など、ここ数年で大きな盛り上がりを見せた運動もあります。そこで使われた様々なキャンペーン技術を検証し、これをどのように応用していくことができるのかもいま大きく問われています。アメリカでは、SEIU委員長が引退を表明し、イギリスではかつてないほどスト権などの権利が蹂躙されています。こうした時代の流れを敏感に感じ取りながら、次の時代を創っていく議論ができれば幸いです。

浦田誠(国際運輸労連内陸運輸部会部長